これが日本版「魔法ワールド」、そして新たな「魔法ワールド」【TIROIR:舞台】

『ハリー・ポッター』は、1997年6月26日に出版されたファンタジー小説シリーズ2001年11月16日には映画一作目『ハリー・ポッターと賢者の石』が公開され、当時の日本で国内の歴代興行収入ランキング3位(参考:歴代ランキング - CINEMAランキング通信 (kogyotsushin.com) を記録した。その後もシリーズ作品の書籍発売と映画公開は続き、完結作品『ハリー・ポッターと死の秘宝』は、アメリカ合衆国の書籍売上は初日のみで830万部を売り上げ(参考:https://www.guinnessworldrecords.jp/world-records/fastest-selling-book-of-fiction-in-24-hours、映画はPart.1と2の二部作で公開された。シリーズの合計興行収入は歴代4位となる96億ドル以上を記録(参考:https://www.boxofficemojo.com/search/?q=harry+potter 

している。 

 

『死の秘宝』出版から6年、映画公開から2年の歳月を経て、2013年に舞台劇での続編製作を発表、2015年6月26日、一作目出版18周年を記念してタイトルが『ハリー・ポッターと呪いの子』であることが明かされた。舞台は2016年7月30日にロンドンのウェスト・エンドにあるパレス・シアターで初演を迎えブロードウェイ、メルボルン、トロントなど世界各地での公演を経て、2022年7月8日、ついに東京で日本公演が始まった 

 

日本公演では、ハリー・ポッター役を藤原竜也、石丸幹二、向井理が演じることが2022年1月22日に発表され、話題を呼んだ 

藤原竜也は、かつて「世界のニナガワ」と称された蜷川幸雄に才能を見出され、『身毒丸』や『ハムレット』など数多くの舞台に出演し、演技力を発揮舞台の他、ドラマや映画の世界にも進出しており、確かな実力により日本国内でも独自の存在感を放っている。 

石丸幹二は、かつて劇団四季に所属し、数々の舞台に出演。2013年には平成の民放ドラマ史上の視聴率を記録したTBSの連続テレビドラマ『半沢直樹』にて、主人公・半沢の敵、浅野支店長役を好演し知名度を上げた 

向井理は、芸能界デビュー前にバーテンダーとして働いていた異色の経歴を持っている。2010年にはNHK朝の連続ドラマ小説『ゲゲゲの女房』にてヒロインの夫でもある水木しげる役として出演、2011年の大河ドラマ『江〜姫たちの戦国〜』でも主人公・江の夫である徳川秀忠役を演じる。現在では、その存在感を抑え、名バイプレイヤーの1人として様々な作品で多彩なキャラクターを演じている。 

そんなキャスト陣がハリー・ポッター役を演じるため、公演によって他の役者の演技や作品の雰囲気すらもガラリと変えてくれそうな期待度とともに、世間の注目度も、座席予約が7月時点で9月末まで埋まっているほどに高まっている。 

魔法ワールド現在も、『ファンタスティック・ビースト』シリーズとして映画制作が続いており、2016年11月18日に公開された『魔法使いの旅』を皮切りに、現在三作目まで公開、今後も第五作目まで制作されることが決定している。 

 

今回の『呪いの子』は、『死の秘宝』にてハリーがヴォルデモートを打ち破ってから19年後が舞台。ハリーは親友ロン・ウィーズリーの妹であるジニーと結婚し、ジェームズ・シリウス・ポッター、アルバス・セブルス・ポッター、リリー・ルーナ・ポッターの3人の父親となっている。主人公の1人として大きく活躍するのは次男のアルバスで、彼は偉業を成し遂げた父と、父と同じグリフィンドール寮に入った兄のジェームズへの劣等感から、次第に父であるハリーに強い反抗心を抱いていく。一方のハリーは、赤ん坊の頃ヴォルデモートに両親を殺されたため本当の親の愛情を知らないまま父になったことに恐怖を感じていた。そんな映画シリーズでは描かれなかった、息子としてのハリーの心の空白、それを抱えたハリーとアルバスの親子関係にも要注目の作品である。 

 

これまでの映画シリーズで大きな見どころの一つだった壮大で迫力のある魔法ワールドが、スクリーンから飛び出し舞台の上描かれる。映画の背景のような舞台美術、作中の衣装を纏ったキャストたちが本当に別世界からやってきたかのような没入感を、鑑賞するすべての人々に与えることだろう映画の中で描かれてきた数々の魔法を、劇場でどのように“体験”することができるのか。目の前に広がる「魔法ワールド」の一部になる “体験”を、この機会にしてみることは、きっと人生において最も貴重な出来事の一つとなるだろう。 


(文:伊藤潤)